星の銀貨(グリム)

星の銀貨★

 

昔、ある所に一人の女の子がいました。女の子はお父さんとお母さんが亡くなって、お金がなく、住む家や寝る所もなくなってしまいました。そして、とうとう持っているものは、着ている服と帽子と、親切な人からもらったパン一つだけになってしまいました。でも、女の子は優しくてきれいな心を持ち続けていました。

 

一人ぼっちの女の子は、野原を歩いて行きました。すると、お腹を空かせた男の人がいて、「何か食べるものをおくれ。」と言いました。女の子は、持っていたパンを全部、その男の人にあげました。

 

また歩いて行くと、今度は子供がやってきて、
「頭が寒いよう。何かかぶるものちょうだい。」と言いました。女の子は、かぶっていた帽子をぬいで、その子にあげました。


それからまた歩いて行くと、また別の子供がやってきて、「上着がなくて寒いよう。何か着るものをちょうだい。」と言いました。女の子は、自分の上着をぬいで、その子に着せてあげました。

 

それからまた歩いて行くと、また別の子供がやってきて、「スカートをちょうだい。」と言いました。女の子は、スカートもぬいでその子にあげました。


そのうち、女の子は森へやってきました。あたりはもう暗くなっていました。そこへまた別の子供がやってきて、今度は「肌着をちょうだい。」と言いました。女の子は、「もう真っ暗で誰にも見られないわ。」と思って、とうとう肌着までぬいで、その子にあげてしまいました。


もう女の子は何も持っていないし、何も着ていませんでした。すると突然、空からお星さまがたくさん降ってきました。そのお星さまは、地面に落ちると、キラキラ光る銀色のお金(銀貨)になりました。そしていつの間にか、女の子は新しいきれいな肌着を着ていました。
女の子は、銀貨を全部ひろいあつめて、それで一生お金に困らないで暮らすことができました。

 

おしまい