赤ずきん(グリム)

赤ずきん


昔、ある所に、可愛い小さな女の子がいました。女の子のおばあさんは、特にこの子を可愛がっていました。ある時おばあさんは、女の子のために、きれいな赤い布で頭巾を作ってくれました。女の子はこの赤い頭巾が気に入って、いつもかぶっていたので、皆から「赤ずきんちゃん」と呼ばれるようになりました。


ある日、お母さんが赤ずきんちゃんを呼んで、
赤ずきんちゃん、おばあさんが病気で寝込んでいるの。元気になるように、お母さんが作ったケーキとワインを、おばあさんの家に持っていってあげてちょうだい。道草しないで、まっすぐ行くのよ。おばあさんの家に着いたら、きちんとご挨拶してね。」と言いました。
赤ずきんちゃんは、「わかったわ。いってきます。」と言って、出かけていきました。


おばあさんの家は森の中にあります。赤ずきんちゃんが森に入って行くと、オオカミが出てきて、「赤ずきんちゃん、こんにちは。」と声をかけてきました。

赤ずきんちゃんは、オオカミが怖いことを知らなかったので、「こんにちは、オオカミさん。」ときちんと返事をしました。
オオカミは、「赤ずきんちゃん、どこへ行くの。何を持っているんだい。」と聞きました。
赤ずきんちゃんは、「おばあさんが病気だから、ケーキとワインを持って、お見舞いに行くのよ。」と答えました。

オオカミは心の中で、「美味しそうな女の子だな。この子をだまして、この子もばあさんも、どちらも食べてしまおう。」と考えました。
そこでオオカミは、「赤ずきんちゃん、まわりを見てごらん。きれいなお花がたくさん咲いているよ。」と言いました。

赤ずきんちゃんが森の中を見渡すと、本当にきれいな花がたくさん咲いていました。赤ずきんちゃんは、「こんなきれいなお花を持っていってあげたら、おばあさんはきつと喜ぶわ。」と思って、道の周りの花を摘み始めました。そうしているうちに、「あっちのお花の方がきれいかな」「向こうにはもっとたくさん咲いてるわ」と、いつのまにかどんどん道から離れていってしまいました。


オオカミはその間に、おばあさんの家へ急いでいきました。そして、トントンとドアをたたきました。
おばあさんは部屋の中から、「どなた。」と聞きました。
オオカミは赤ずきんちゃんの振りをして、「私、赤ずきんちゃんよ。ケーキとワインを持ってきたの。」と言いました。
おばあちゃんは「まあ、赤ずきんちゃん、よく来てくれたね。鍵は開いているから、お入りなさい。」と言いました。
オオカミはは、ドアをバンと開けると、いきなりおばあさんに飛びかかって、大きな口でパクリと飲み込んでしまいました。

それから、おばあさんの服を着て、おばあさんのナイトキャップをかぶって、おばあさんのベッドにもぐりこみました。

 

赤ずきんちゃんは、きれいなお花を手に持ちきれないくらいいっぱい摘んで、またおばあさんの家への道に戻って歩き出しました。

赤ずきんちゃんがおばあさんの家へ来てみると、ドアが開いたままになっていたので、赤ずきんちゃんは、「変だな。」と思いました。「こんにちは。」と挨拶をしても、返事はありまん。

おばあさんのベッドに行くと、おばあさんはナイトキャップをかぶって寝ていました。でも、なんだかいつもと様子が違います。

 

赤ずきんちゃんはおばあさんに話しかけました。
「ねぇ、おばあさん。どうしてそんなにお耳が大きいの。」
「それはね、おまえの声をよく聞くためだよ。」
「ねぇ、おばあさん。どうしてそんなにお目々がが大きいの。」
「それはね、おまえの顔をよく見るためだよ。」
「ねぇ、おばあさん。どうしてそんなにお口が大きいの。」
「それはね、お前を食べるためだよ!」
そういうとオオカミは、いきなり赤ずきんちゃんに飛びかかって、大きな口でパクリと飲み込んでてしまいました。オオカミはお腹がいっぱいになったので、そのままベッドの上で、ぐうぐういびきをかきながら眠ってしまいました。

 

ちょうどそこへ狩人が通りかかりました。狩人は、
「おばあさんが、こんな大きないびきをかいているなんて、おかしいぞ。」と思いました。狩人が部屋の中へ入ってみると、ベッドの上でオオカミが眠っていました。
狩人はすぐにオオカミを鉄砲で撃とうとしましたが、「もしかしたらオオカミのやつ、おばあさんをそのまま飲み込んでいるかもしれないぞ」と思いました。

そこで狩人は、撃つのはやめて、ハサミを出すと、眠っているオオカミのお腹をジョキジョキ切り始めました。
するとお腹の中から、赤いずきんちゃんが元気に飛び出してきました。赤ずきんちゃんは、「あぁ、怖かった。オオカミのお腹の中は真っ暗だったのよ。」と言いました。それから、おばあさんも無事にオオカミのお腹の中から出てきました。

 

赤ずきんちゃんは、大きな石を運んできて、オオカミはのお腹の中にいっぱい詰め込みました。目を覚ましたオオカミは逃げ出そうとしましたが、お腹の石が重すぎて、そのまま床にバッタリ倒れて死んでしまいました。


三人は大喜びしました。

狩人は、オオカミはの毛皮を持って帰りました。

おばあさんは、赤ずきんちゃんのもってきたケーキを食べて、ワインを飲むと、すっかり元気になりました。

それから赤ずきんちゃんは、「お母さんの言った通り、もう二度と、道草なんてしないわ。」と思いました。

 

おしまい