ラプンツェル(グリム)

ラプンツェル

 

昔、ある所に結婚している男の人と女の人がいました。二人は子供が欲しかったので、何年もお祈りをしていました。そして、やっと女の人のお腹に赤ちゃんが授かりました。

 

この二人の家の裏には、魔女が住んでいました。魔女は素敵な庭を持っていました。そこには、色々なきれいな花や、珍しい野菜やハーブが植えられていました。でも、その庭は魔女以外の人は入れないように、高い塀で囲まれていました。

 

ある時、お腹が大きくなってきた女の人は、自分の家の窓から、魔女の庭を眺めていました。

すると、きれいな緑色の葉をした野菜が目に入りました。それはラプンツェルという野菜でした。

女の人は、その美味しそうなラプンツェルが食べたくてたまらなくなりました。でも、それは魔女のものなので、食べることはできません。そう思うと、女の人はだんだん痩せて、顔色も悪くなっていきました。

 

男の人は元気のない女の人を心配して、いったいどうしたのかと尋ねるました。すると女の人は、「ああ、あのラプンツェルを食べられないのなら、私は死んでしまうわ。」と答えました。それを聞いた男の人は、女の人を愛していたので、何とかしてラプンツェルを食べさせてあげたいと思いました。

 

男の人は暗くなってから、高い塀を乗り越えて、魔女の庭にこつそり入りました。そして急いでラプンツェルを取って、家に持ち帰りました。

女の人はすぐにラプンツェルをサラダにして、むしゃむしゃとあっというまに食べてしまいました。そのラプンツェルがあまりに美味しかったので、女の人は前よりももっともっと、ラプンツェルが食べたくてたまらなくなってしまいました。

 

男の人は、女の人のために、もう一度魔女の庭にしのびこみました。ところが塀を降りると、目の前にはおそろしい魔女が立っていたのです!魔女はラプンツェルが盗まれたことに気がづいて、とても怒っていました。

男の人は怖がりながら、「どうか許してください。」と魔女に頼みました。そして、女の人のお腹に赤ちゃんがいて、ラプンツェルを食べなければ死んでしまいそうなんだ、と話しました。

すると魔女は、「それなら、ラプンツェルは好きなだけあげよう。でもその代わりに、赤ちゃんが生まれたらその子を私によこすんだよ。私が自分の子供のようにして、大事に育ててあげるからね。」と言いました。

男の人は本当は嫌でしたが、魔女がおそろしかったので、とうとう魔女の言う通りにすると約束してしまいました。

 

それからしばらくして、女の子の赤ちゃんが生まれました。するとすぐに魔女がやってきて、「この子はラプンツェルという名前にしよう。約束通り私がもらっていくよ。」と言って、ラプンツェルを連れていってしまいました。


ラプンツェルは大きくなると、この世で一番美しい娘になりました。ラプンツェルは金色の美しい髪をしていました。その髪はとても長くて、10mもありました。

魔女はラプンツェルが12歳になると、森の中にある高い塔の上に閉じ込めてしまいました。その塔は1番上に小さな窓が1つあるだけで、階段も入り口もありませんでした。
魔女は塔の下へやってくると、「ラプンツェルラプンツェル、髪をたらしておくれ。」と叫びました。その声が聞こえると、ラプンツェルは金色の長くて美しい髪を、窓から塔の下に向かってたらしました。魔女はその髪を伝って、塔の上へ登っていきました。

 

それから何年かたったある日、1人の王子様が馬で森へやってきて、塔のそばを通りかかりました。王子様はその時、優しい歌声を耳にしました。それは塔の上でラプンツェルが歌っている声でした。

王子様はその歌声にすっかり聴き惚れて、歌っている人に会ってみたいと思いました。とかろが、塔を探しても入り口が見つかりません。仕方なく、その日は諦めてお城に帰りました。

 

それから王子様は毎日森へやってきて、塔の側の木の後ろで、ラプンツェルの歌声を聴いていました。

そんなある日、魔女が塔の下にやってきました。魔女は王子様には気がつかないで、「ラプンツェルラプンツェル、髪をたらしておくれ」と叫びました。すると塔の上から、金色の長くて美しい髪が降りてきました。魔女はその髪を伝って、塔の上へ上っていきました。

 

その様子を見ていた王子様は、自分も同じようにすれば、塔の上に上れるかもしれないと思いました。王子様は次の日、暗くなってから塔の下に行きました。そして、「ラプンツェルラプンツェル、髪を垂らしておくれ」と呼びかけました。

すると、すぐに金色の長くて美しい髪が目の前に降りてきました。王子様はその髪を伝って、塔の上へ上っていきました。

 

ラプンツェルは王子様を見て、とても驚きました。

王子様はラプンツェルに、「あなたの歌声を聴いて、あなたを好きになりました。どうか僕と結婚してください。」と言いました。

ラプンツェルも、若くて優しい王子様を好きになりました。そして、「王子様はきっと、魔女のおばさんよりも、私を幸せにしてくれるだろう。」と思いました。

ラプンツェルは王子様に、「これから塔に来る時には、絹の紐を一束ずつ持ってきてください。」とお願いしました。ラプンツェルは、その絹の紐ではしごを編んで、それが出来上がった時には、塔を降りて王子様とお城に行く約束をしました。それから王子様は毎日、ラプンツェルに会いに塔の上へやってきました。

 

魔女はいつも昼間に塔にやって来くので、夜に来る王子様の事は、ちっとも気がついていませんでした。

でもある時、ラプンツェルは長い髪で魔女を引き上げながら、「ああ、おばさんは重たいわ。王子様は軽々上ってきてくれるのに。」と、思わず口に出してしまいました。

魔女は怒って、「ここまで育ててやった私を騙していたなんて、なんて恩知らずな娘だ!」と叫びました。

そしてラプンツェルの長い髪を掴み、ハサミで根元から切き落としました。それから、ラプンツェルを遠い荒れた野原へ連れて行き、そこに置き去りにしてしまいました。

 

その夜、王子様はいつものようにやってきました。そして、「ラプンツェルラプンツェル、髪をたらしておくれ」と呼びかけました。

魔女はラプンツェルのふりをして、切った長い髪をたらしました。王子様は塔に上って驚きました。目の前にいるのがラプンツェルではなくて、恐ろしい魔女だったからです。

魔女は、「ラプンツェルはもういないよ。お前は二度と、あの娘に会うことはできないよ。」と言いました。

王子はあまりの悲しみに耐えられなくなり、塔の上から飛び降りてしまいました。そしてその時、地面にあったイバラが目に刺さり、王子様の両目は見えなくなってしまったのです。

王子様は泣きながら、森の中をさまよい歩き続けました。

 

何年もして、王子様はラプンツェルのいる荒れた野原にやってきました。そこで王子様は懐かしい歌声を聞いて、そちらの方へと歩いていきました。

ラプンツェルは男の子と女の子の双子を産んで育てていました。歌を歌っていたラプンツェルは、王子様を見つけると、駆けよって王子様の首に抱きつきました。そしてラプンツェルの2粒の涙が王子様の目にふりかかると、不思議な事に王子様の目はまた見えるようになりました。

 

王子様はラプンツェルたちを連れて、自分の国に帰りました。国中のみんなが喜びました。それからずっとずっと幸せにくらしました。

 

おしまい